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事実の中に真実を見る、ということ

投稿日時:2011/08/12(金) 08:45rss

千年続く 会社をめざそう⑰
■事実の中に真実を見る、ということ■


「目に映る事実が、そのものごとの真実を
現わしているとは限らないんですね。」
 
ある社員との面談でのこと。
 
「ついこの前までは、Aさん(彼の前の職場の上司)の
私に対する指導が、いじめにしか思えませんでした。」
 
と話し始めた彼は、今年の配置転換によって、
入社以来の部署を離れることになりました。

Aさんは非常に厳しい人間で、言うことも実に細かい。
それは社内的にも有名で、中には「あの人の下には行きたくない」と
公然と口にする者がいるほど。
彼はそういう上司の下で3年の歳月を過ごしてきました。
 
その彼が今年に入って配属された部署は、全く正反対な部署。
よく言えば自主性を重んじた自由な職場。ありていに言えば放任主義。
あまりの違いに、当初は戸惑いを超えて、恐怖さえ感じたとのこと。

頑丈な柵に覆われた窮屈ながらも安全な場所から、
どこに天敵がいるともわからぬサバンナに放り出されたような感覚だったのだとか……。
 
3か月ほど経って、やっと周りの状況を冷静に見ることができるようになってきたとき、
初めて自分がどれだけ恵まれていたかに気付いたとのこと。
 
「Aさんの下にいなかったら、僕のようなルーズな人間は
ダメになっていたと思います」
 
彼からの相談は、彼が新たに見出した
「新旧両方の職場のよい点を活かして、よりよい職場を作りたい」という目標を、
具体的にどのようにかなえていったらよいか、というものでした。

「それは僕にしかできないことですから」と口にする彼の覚悟に
頼もしさを感じました。
 
いじめにしか思えなかった上司の指導が、自分がその立場にたったとき、
いかにありがたく、いかに稀有なことであったかに気付くことがあります。

実は私自身がそうでした。
残念ながら私自身は、その真実に気付いたときに、
もうその人はおられませんでしたが……。
 
目の前の事実を好意的に受け止めてみる。特に二十代においては、
そういう姿勢が大切だと思います。
 
一方で、上司の方も相当の覚悟を以て望まなければなりません。
特に新卒の場合、初めて付く上司の指導が、生涯を通じて標準になるもの。
それだけ責任が重い。
 
お互いがそのような姿勢で臨んだとき、両者の関係は、
信頼に満ち溢れた、そして相互に切磋琢磨し合える
素晴らしいものになるのだと思います。



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ボードメンバープロフィール

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かめい ひでたか

1965年岐阜県生まれ。89年名南コンサルティングネットワーク入社。2001年より取締役。後継者育成や経営計画立案を得意分野とする。愛知近県の後継者を対象にした勉強会を各地で主宰するなど、「事業承継」をライフワークにしている。月刊ニュートップリーダー(L.)連載『事業承継の王道』など、執筆・講演活動も精力的に行なう。

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