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2011年11月22日(火)更新

生かされている、ということ

千年続く 会社をめざそう㉓
■ 生かされている、ということ■
 
 
先日、ある方から、
「百発百中って、実際にありえると思いますか?」
と問われました。

「難しいでしょうね」と答えた私にその方は、
「実はあり得るんです」と微笑みながら、
その秘訣を教えてくださいました。それは……
 
「弓を射ってから、的を描けばいいんです」
 
狐につままれたような気分になりましたが、たしかにそれなら百発百中。
でも何だか釈然としませんね。
 
その方は、私の心を見透かしたように、次のように続けられました。
 
「人生も本来、百発百中なんですよ」
 
「当初自分が目指しているものがあるとしますね。ところがその通りには
いかなかった。でも必ずそこから学ぶことがあるものです」
 
「それが分かった人にとっては、実はそちらの方が本来の的だった」
 
「それを手に入れるために当初目指していたものがあり、そして必然に失
敗した。だから学べた。ということは、その失敗は本当に手に入れるべき
ものを手に入れるための失敗であって目に見えないものが指示した真の的
だった、ということなんです」
 
「自力のみで生きている人はここに気づくことができません。失敗は失敗
でしかない。そういう人は、結局失敗からは何も学べず、あの時、ああし
ておけばよかった、こうしておけばよかったと、後悔しか残らない。悲し
いですね」
 
たしかにその通りです。
大事なのは、他力で生きていることに気づくこと。
よく考えれば、この心臓も、この肺も、この胃腸も、どれも
私の意思通りに動いているものはありません。
勝手に動いてくれています。要するに自分の体でさえも他力。
 
他力で生かされていることに気づいた時、
人はあらゆることから学ぶことができるようになります。
だから苦難を恐れない。失敗を怖がらない。
なぜならそこに得るべき的があることを知っているからです。
 
人は失敗からしか学べません。
でもそれは、他力で生きていることを受け入れた者だけが得られる学び、
なのだと思います。
 
さらに話は発展します。
 
「他力で生かされていることに気づいた人は、そのことに感謝し、報恩の
行動を取り始める。人のために生きようとする。自ら他力になろうとする
んですね」
 
「他力が他力を生み出して増幅する。まさに、他力スパイラルが起こりま
す。ここに人類発展の秘訣があるんだと思います」
 
「こういう考えかたは、この国には元々あったんだと思います。明治維新
で否定され、敗戦で抹殺されてしまいましたけどね……」
 
「結局自力で生きるということは、自分の力の及ぶ狭い範囲でしか責任を
持とうとしないことに等しい。そういう人が増えてしまった」
 
そして最後に、次のように結ばれました。
 
「私たちの行動で、世の中を変えていきましょう!
 
私は大きく頷き、実践を誓いました。





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2011年11月08日(火)更新

行動で社員の心に火をつける、ということ

千年続く 会社をめざそう㉒
■行動で社員の心に火をつける、ということ■

 
Kさんは36歳。昨年4月、勤めていた商社を円満退職し、
父親が経営する会社に入りました。
 
商社では32歳で課長に抜擢されるなど異例の待遇で、
それこそ鳴り物入りでの入社でした。
「他社での経験など意味がない。お手並み拝見と行きますか?」
といった、うがった見方をする社員もいたようです。
 
「全く継ぐ予定がなかった」というKさん。
勤めていた商社とは畑違いの製造業、
「一からの出直し」という気持ちでみっちり現場で汗を流されました。
 
現場に入ってまず気づいたのは、
「汚い」「暗い」「だらしない」職場環境。
 
しかし、自分には何かを言えるだけのものがまだない。
「まずは自分がモノを言えるだけの人間になろう」と心に誓ったそうです。
 
誰よりも早く出社し、出勤してくる社員に大きな明るい声で
「おはようございます」、
わからないことは素直に教えを乞い、
「宜しくお願いします」「はい!」「ありがとうございました」
と明るく受け答え、仕事が終われば、
最後まで残って機械をピカピカに磨いて帰る。
 
「商社のエリート」とは思えないその行動に、社員は最初は戸惑い、
「何か裏があるんじゃないか」とか「メッキはすぐにはがれるさ」といった噂話が起こるほど。
 
ところが、1か月経っても、2か月経っても
その立ち居振る舞いは変わらない。
 
3か月目に入ってから、徐々に雰囲気が変わってきたのだそうです。
ぎこちないながらも、Kさんが声を掛ける前に挨拶したり、
一緒に掃除を始める社員がポツリポツリと出て来た。
そして1年半経過した今では、
見違えるほどの雰囲気になったとのこと。
 
私は、最初に掃除の手伝いをし始めたという
S君にその理由を尋ねてみました。
 
「正直、最初は『商社のエリートに何ができる』って感じ
でした。『親の七光りかよ』って。俺、たたき上げだから、
そういうのって大っ嫌いだった。できないところを見つけ
て、こきおろしてやろうとさえ思ってた」
 
「ところが思い描いていた人とは全然違った。素直で、明
るくって、何でも一生懸命……。自分もこんな人になりた
いな、って素直に思えた。そう思ったら、雑巾を手にして
ました(笑)」
 
実はS君が一番Kさんに反発心を持っていたのだそうです。
お父様も一番心配していた人材だったとか。
でも「味方につけたら最高の人材」だとも……。
 
自らの行動で火を点ける。
その行動が正しくて、魅力的ならば、火は灯り、燃え盛る。
燃え盛るまで、行動し続ける。
そういう姿勢が必要なのだと思います。
 



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