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2012年12月28日(金)更新

部下指導は「できる」から始まる、ということ


千年続く 会社をめざそう㊺
■部下指導は「できる」から始まる、ということ■

 
 

指導というものは、本当に難しいものです。
一番の難しさは、指導する側が必要だと思っていても、
指導される当の本人がその時点ではその必要性を感じていない、
というところにあるのではないかと思います。
 
先日も、20年前に直属の部下だった者と久しぶりに飲む機会があり、
酔いも手伝ってか、彼が次のようなことを話してくれました。
 
「今だから言えますけど、正直、僕は亀井さんのことが大っ嫌いだった。
亀井さんの言うことはいちいち納得できないし、反発しても正論で言い
返されるから何も言えなくなっちゃうし、言われた通りやってもなかな
か成果は出ないし・・・」
 
一緒にいた今の部下が目を白黒させながら聴いているのをよそ眼に、
その頃どれだけ嫌な思いをしていたかを延々と続けます。
しかし最後に、
 
「でも、あのときの指導があったから今の自分があると、これは自信を
持って言えます。本当に感謝しているんですよ。今だから言えますけど
・・・」
 
ちょっと嬉しかったです。ただ、「もう一回“あの頃の”亀井さんの部下になれと言われたら、
きっぱりと断りますけどね(笑)」の一言は要りませんでしたが・・・。
 
20年以上の歳月が経っていますが、
部下に対する姿勢はそれほど変わってはいないようです。
ただ、以前から比べれば、相手が気持ちよく理解し、納得し、
喜んで動いてくれるような工夫はするようになっているようです。
彼が“あの頃”を強調した理由は、
以前の私にはその工夫が全くなかったからだそうですから。
 
相手が「必要ない」と思っていても、
自分が「この人には必要だ」と思うのならば、
焦らず、じっくりと、相手がその必要性に気付くまで、
穏やかに伝え続ける。
 
部下指導においては、このような姿勢が大切なのだと思います。
そしてその相手への思い遣りが本物ならば、必ず届くのだと・・・
 
「こっちがそういう気持ちで接したって、伝わらない奴には伝わらない」と
達観されている方とよく出会います。
正直申し上げれば、それは逃げであり、
人の上に立つ者としての責任放棄であると思います。
 
「ダメだ」から始まるからダメになる。
「できる」から始めれば、必ずできるようになる。
そういう基本的認識が必要なのだと思うのです。
 
世界の人口70億人の中で私が出会える人はほんのごく僅か。
その僅かな人たちの中の一人が今、誰でもない、私という上司の前に立っている。
 
そのことに思い至れば、我が子と思い、我が弟・妹と思い、
本当に幸せな人生を送って欲しいと心から願って指導することができるようになる。
 
そして、本当に我が子と思い、我が弟・妹と思うことができるようになれば、
できるようになるまで我慢強く付き合っていくことができるようになる。
 
そういうことだと思います。
 
自分の目に映る相手の問題ということよりも、
「自分は今、どのタイプになっているのか?」を
相手という鏡に映った自分に問い掛けてみることが大切なのだと思います。
 
自戒を込めて・・・
 



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2012年10月30日(火)更新

約束を守る、ということ


千年続く 会社をめざそう㊹
■約束を守る、ということ■

 

 
「やるだけやってみます」
 
この言葉を聞いて、皆さんはどうお感じになりますか。
「困難なことでも何とかしようとする前向きな気持ちを感じる」方もいらっしゃるでしょうし、
「うまくいかなかったときの逃げ場を作っているだけだ」と
捉えられた方もいるのではないかと思います。
 
同じ言葉なのに、これだけ正反対の捉え方をされてしまう。
何だか面白いですね。
 
なぜこれほどのギャップが生じるのか? 
私は「この言葉を口にしている人が誰かによって感じ方が変わる」ように思います。
 
前者の感じ方ができる相手は、約束を守る人、ないしは、
その約束を守るための努力と時間を惜しまないだろうと確信できる人。
逆に後者のように感じてしまうのは、約束を守らない人。いかがでしょうか?
 
以前、同じようなお話をした時、
「そんなんだったら、約束なんてしないほうがましだ!」と
真顔で答えた方がいらっしゃいました(苦笑)。
これは本末転倒ですね。
 
私は「約束は成長への片道切符」だと思います。

約束することはとても苦しい。約束しないですむならそのほうが楽。
でも、きちんと約束をし、その約束を果たした先には、
それ以前の自分とは比べ物にならないほど別人の成長した自分がいる。
その上、人からの信頼も自然についてくる。
 
要するに、約束をする・しないは“成長”に、
約束を守る・守らないは“信頼”に影響を及ぼす。

表にまとめると、こんな感じでしょうか?



 
「約束もしていないのに守る、守らないというのはおかしい」と
お感じになる方もいらっしゃると思いますが、
“約束”を“期待”と置き換えていただければ、
その意味はわかっていただけると思います。

ここも一つのポイントですが、約束はしていないけれども
人から期待されていることを認識している場合、
それは約束しているのと同じことだと思います。
 
ただ自ら覚悟をもって約束するか、
結果として約束したと同じことになるかでは、全くもって、雲泥の差ですが……。
 
いずれにしろ、約束することができる人は伸び、
約束を果たす人には自信と信頼が集まり、
約束をしない人は堕落する、そういうことだと思います。
 
一方で「人は鏡」だと言います。
また一番守らなければならないのは「自分との約束」だとも……。
 
自分の目に映る相手の問題ということよりも、
「自分は今、どのタイプになっているのか?」
と、相手という鏡に映った自分に問い掛けてみることが大切なのだと思います。
 
自戒を込めて・・・





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2012年10月16日(火)更新

肚を括ることのできる採用をする、ということ


千年続く 会社をめざそう㊸
■肚を括ることのできる採用をする、ということ■

 
 

前回に引き続き、私の採用責任者時代の失敗から学んだことを
お伝えしたいと思います。
 
採用活動を始めた最初の2~3年、何とも納得できない現象がありました。

それは、
 
「内定を出した途端に豹変する」
 
ということ。

内定をもらうまでは明るく、元気で、素直で、
二言目には「何でもやります!」。
 
その魅力に惹かれて内定を出すのですが、内定を出したとたん、
暗く、元気なく、自分のことしか考えず、
「○○は本当にやらなければならないのですか?」となってしまう。
当時は何人かに一人はこのような“豹変”する子がいました。
 
最初は「騙された」と、その内定者のせいにしていたのですが、
そのうちに、自分の面接方法に原因があるのではないかと考えるようになりました。
 
「私は○○をやっていて、そこで□□という成果を挙げることができました」
 
面接中、こんな話がよく出てきます。
それに対して当時の私は、
 
「それは凄いね。そういうことができるなら、
当社でやっている△△で力を発揮してもらえそうだね」
 
などと、その言葉を鵜呑みにし、一人悦に浸っていました。
それほど厳しいものではなかったのですが、
採用担当者としてのノルマもありましたので、
「これで一人確定!」という気持ちがあったことは否定できませんし、
応募者から「いい人と思われたい」という気持ちが
なかったとも言い切れません。
 
しかし実際には、

・「(自ら)やっていた」のではなく「(嫌々)やらされていた」
・「成果を挙げた」のは自分の力量や思いによるものではなく、他力によるものだった

などといった場合がある。
豹変する子の多くはそういうタイプで、
嘘とまでは言わないまでも、自力でないものを自力とし、
それが内定の理由になっていることを自覚する彼らは、
等しく内定後に“豹変”するのです。
 
このことに気づいてから、私は
「面接では“性悪説”。採用したら“性善説”」を心掛けています。
 
内定を出す前は両目を開けて長所も短所もじっくり見極める。
想像や思い込みではなく、確実に事実で裏を取る。
人は嘘をつくつもりではなくとも、
結果としてそれに等しいことをしてしまうことがある。
でも事実は裏切らない。
 
「なぜそうしようと思ったの?」「障害が生じた時あなたは何をしたの?」
「どうしてその苦難を乗り越えることができたの?」とどんどん詰める。
本当に“自力”によるものであればスラスラと答えられる。
少しでも事実ではなければ答えは詰まる、窮する、しどろもどろになる。
 
このように“性悪説”に立った問答をすることで
応募者の“素”の姿が顕かになり、
結果としてお互いの「ミスマッチ」は解消される、
そういうものだと思います。
 
また短所にも徹底的にスポットを当てる。
その子の長所・短所を十二分に知り尽くしたうえで、
「私はこの短所を認め許すことができるか、
ないしは責任を持って改めさせることができるか」で、
内定を出すか出さないかを判断する。
そういう姿勢が大切であることを学びました。
 
そしてこのような意思決定をしたとき、
彼・彼女をわが子のように育てていくことの
肚括りができるものだと思っています。



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2012年09月28日(金)更新

責任をもって育てる、ということ


千年続く 会社をめざそう㊷
■責任をもって育てる、ということ■


 
 
現在当社では、コンサルティング部門を中心に中途採用を実施しています。
私は平成14年から昨春まで人事・総務の責任者として採用に直接関わってきましたが、
現場の責任者に戻った今、改めてその難しさを痛感しています。
 
総務時代は数多くの失敗をしてきました。
またその失敗を通じて多くのことを学ばせてもいただきました。
その中から、いくつかご紹介させていただきたいと思います。
 
今でも悔やんでいる最大の失敗があります。
 
当社では新卒採用の際、①筆記、②グループディスカッション(以下GD)、
③マネージャー(課長クラス)面接、④配属予定部署の役員面接、
⑤社長(最終)面接というステップを踏みます。
 
第二次選考のGDでその失敗は起こりました。
このGDでは、120名ほどの一次選考通過者を1回あたり30名ほどのグループに分け、
さらにグループごとに5~6チームに分けて一つのテーマでディスカッションを行い、
その時の発言や立居振舞い・担った役割などを
毎回10名ほどのマネージャーが審査員となって見分し、
その結果で通過者を選定します。
 
当時の私は「多数決制」を採用していました。
すなわちマネージャー推薦の数の多さをもって、
二次選考通過者を決定していたのです。
 
2年目のことです。
あるマネージャーが「できれば残して欲しい」という学生がいました。
しかしその他のマネージャーからの推薦はありませんでした。
私は原則に従って、その子に不採用通知を送りました。
 
しかし、どこかで引っ掛かりがあった。そんな時、その子から電話が入って来たのです。
「もう一度チャンスをください」と。
私は「残して欲しい」と言ったマネージャーに連絡を入れました。
彼は大いに喜び、「ぜひ面接させてほしい」と懇願しました。
その後、役員面接、社長面接と進んで、結果は「採用」。
モヤモヤ感を感じながらも、
少しホッとしたというのがその時の素直な気持ちでした。
 
しかし、それだけではすみませんでした。
 
その年の忘年会の、内定者も交えた二次会の席で、
その子が他の内定者に「本当は二次選考で落ちていた。一度捨てられた子」と
話しているのを耳にし、自分が犯した罪の大きさに愕然としました。

その子が今ではその部門のNO2の立場を担っていることを考えると、
なおさら心に刺さった棘が痛みます。
「不要な負い目を背負わせてしまった」と。
 
翌年の二次選考では、審査方法を「スター誕生方式」に変えました。
年配の方であればご存じだと思いますが、
歌手志望の子がステージで歌い、それを見聞きし、
その子を育てたいと思ったプロダクションの代表者が
プラカードを挙げてその意思表示をする、という
古いテレビ番組と同じ方法を採ったのです。
 
具体的には、GD終了後、審査員となったマネージャーに
次のように質問します。
「あなたが責任を持って育てたいと思う人に手を挙げてください」と。
 
この方式に変えて、一つ面白い現象が起こりました。
10名の審査員の殆どが「○」を付けているのに、
「育てたい」人には誰も手を挙げない、ということが結構多く見受けられたのです。
「良い子」と「育てたい子」は、どうも違うようです。
 
「責任を持って人を採用する」姿勢は、
永続企業が等しく持つ一面ではないかと思います。
 
もう一つ、ご紹介したい失敗がありますが、
これは次回に譲りたいと思います。
 



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2012年08月29日(水)更新

お客様に寄り添う、ということ


千年続く 会社をめざそう㊶
■お客様に寄り添う、ということ■

 
 
先日、営業成績が伸び悩むA君から電話があり、
「どうしたら売れるようになるのでしょうか?」との
質問を受けました。
 
「売ろうとしていたら売れないよ。得る(うる)のはお客様で、
こちらは買ってもらうの」
 
「はぁ~」と不満とも不安ともつかない声のあと、
「どうしたら買ってもらえるか、教えてください」というA君に、
私は次のような話をしました。
 
「恋人がいるとするだろ。その恋人が、思い悩んでいる。そんな
時、どうする? いきなり『こうしたらどう?』なんて言わない
だろ。だって何に悩んでいるか、わからないんだから。だからま
ずは話を聴くよね?『どうしたの?』って」
 
「そうすると、少しずつ話をし始める。でもたいてい本人も頭の
中が整理されているわけではないから、脈略のない話がいろいろ
出てくる。そんな状態では、こちらもよくわからないから、『そ
れはどういうこと?』『なぜそうなったの?』『本当はどうした
いの?』って、いろんな角度から聴いていくよね。そうすると、
彼女も頭の中がだんだん整理されてくる」
 
「元々、悩んでいるのは彼女。だから答えはこちらにはなくって、
彼女の中にある。こちらができるのは、彼女の中にある答えを引
き出してあげることだけ。そしてそれを引き出すためには、よい
質問をすること」
 
「じゃあ、よい質問をするためには、どうしたらよいと思う? 
そう、本当に彼女のためを思って、彼女の悩みを解決してあげた
いと心から願って、自分のできる最大限のことをしてあげたいと
念願したら、勝手によい質問ができるものさ」
 
「そうこうしているうちに、彼女の悩みの原因がはっきりしてく
る。原因さえはっきりすれば、自分がしてあげられることもはっ
きりする。もし今の自分では解決してあげられないのであれば、
どうしたら力になってあげられるかを考え、実践すればよい」
 
「彼女をお客様に置き換えて、そういう気持ちでお客様に寄り添
っていく。そういう姿勢が大切じゃないかな?」

……と伝える私に、A君は今一つ煮え切らない声でしたが、
「わかりました」と言って電話を切りました。
 
その声のトーンに、
⟨もしかしかしたら、愚痴を聞いて欲しかっただけかもしれない⟩と、
A君の本音に寄り添えなかったのかもしれない自分を、
少し反省しました。
 
いずれにしても、お客様であっても、社員さんであっても、
お客様を親・兄弟や恋人・伴侶、我が子のように寄り添えば、
本人が気づいていなくても、今何が必要かが自ずと見えてくる。
そして、そのとき自分ができる最大限のことをやらせていただく──。
そこに真の信頼関係が生まれるものだと思います。
 
数日後、「今恋人はいないので、妹だったらと思って接してみました」と
嬉しそうに受注報告をしてくれたA君。
私の反省をよそに、自ら「得る」ことができたようです。



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