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2012年08月14日(火)更新

「やらせる」のではなく「やりたくさせる」ということ


千年続く 会社をめざそう㊵
■「やらせる」のではなく「やりたくさせる」ということ■

 
 

先日、ある後継者の集まる会合で、次のような話が出ました。
 
「今の私の最大の課題は、幹部を育てることです」
 
これは多くの後継者が犯す過ちです。後継者に幹部を育てることなどできません。
育てられる何ものももっていないからです。
 
後継者ができることは、自分自身が精一杯背伸びをして
不断に自己成長させていくことしかない。
 
私はよく人の上に立つ人には、次のように話をします。
 
「言葉にするときは目線を下げ、姿を見せるときは目一杯背伸びをすること」
 
ところが得てして人は、この逆をやってしまいます。

すなわち、
 
「言葉にするときは上から目線で、姿を見せなければならない時にはできないことの言い訳ばかり」
 
厳に戒めなければなりません。
 
ではなぜこのような姿勢が大切なのか?
それはご自身が逆の立場であれば、よく理解できるはずです。
 
人はどのような人に魅力を感じるのでしょうか?
「この人のために頑張ろう!」「この人についていこう!」と思わせる人には、
いくつかの共通があるように思います。それは──
 
・互いのことがよく分かり合えていると思える人
・自分のことを大切に思ってくれている(ことが分かる)人
・夢を与えてくれる人、または共有できる人
・その夢に向かって率先垂範、遮二無二がんばっている人
・ この人と一緒にいれば、必ずよい成果が挙げられると確信が持てる人
 
などなど。そしてこのような人こそが、
真に人を育てることができる人なのだと思うのです。
 
真のリーダーシップ力とは、「やらせる」力ではなく「やりたくさせる」力。
そのことに気づいた時、今自分が何をしなければならないのか、
自ずとわかってくるのだと思います。



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2012年07月24日(火)更新

不安を取り除く、ということ


千年続く 会社をめざそう㊴
■不安を取り除く、ということ■

 
 

人はときに「不安」になることがあります。
私はその不安の原因には、概ね三つあるように思います。
 
第一に、やるべきことが見当たらない、見つけ出せない不安。
第二に、やるべきことはわかっているのにできずにいる不安。
第三に、やるべきことをやっているはずなのになかなか成果が表れてこない不安です。
 
同じ不安であっても原因が違うのですから、対処法ももちろん変わってきます。
 
第一の不安に対しては、黙って待っていて答えが見つかるはずはありませんから、
もがきにもがいて、その時々に正しいと思えることをやりながら
答えが見つかるのを待つ、という姿勢になります。
 
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますが、
この不安を解消するためには、
「天命(答えは必ず見つかること)を信じて人事を尽くす」
という姿勢が正しいように思います。
 
第二の不安については、その状態を放置できてしまっている原因を探る必要があります。
「楽をしたい」「苦労を避けたい」「要らぬいざこざを招きたくない」など、その原因はさまざまです。
 
正直なところ、放置できるのなら、それはそれで構わないと思います。
ただ「放置することを積極的に選択している」ということを
きちんと受け止める必要がある。
そうでない人は、必ず周囲に悪しき影響を及ぼすものです。
成果が上がらないことに対して人を責める、
自己を防衛するために要らぬことをする、よくない雰囲気をまき散らす……。
そのことをきちんと認識しておかなければなりません。
 
第三の不安は、これはもう、信ずるところを続けるしかない。
夜が明ければ朝が来る、冬が去れば春が来る。
 
ただし、どれだけ「これが正しい」と信じていても、
「もしかすると何か欠けていることがあるのかもしれない」という疑問は
常に持ち続ける必要がある。
その疑問を心に留めながらも、その答えが出ないのであれば、
信ずるところを全うするしかない。
 
いずれにしろ、不安になるのは、単に準備が足りないだけ。
「これ以上はない」と思える準備ができていれば、不安は覚悟に変わる。
そういうことだと思います。



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2012年07月17日(火)更新

実は過去は変えられる、ということ

千年続く 会社をめざそう㊳
■実は過去は変えられる、ということ■




 
先日、目からウロコの話をうかがいました。
 
私はこれまで「過去と他人は変えられない。変えることができるのは未来と自分」と
お伝えしてきました。

過去の出来事にうじうじせず、変わらない周囲を恨むことなく、
自分と未来を輝かしいものにする、そういう考えの大切さを示すものです。
 
しかしある方から次のようにお聞きしました。
 
「未来は変えられないが、過去は変えることができる」
 
この言葉を聞いた時には、正直、耳を疑いました。
「表現の仕方を間違えられたのだろう」と思ったのです。
 
ところがその方は大真面目で、「言い間違えたわけではないですよ」とまで念を押します。
 その意味をおたずねしたところ、次のような回答が返ってきました。
 
「未来はまだ起こってないのだから変えることはできません。
また過去に起こってしまったことそのものは変えられません。
でもその出来事の捉え方は変えることができます。だから過去は
変えられるのです。」
 
なるほど、と唸るしかありませんでした。
 
人間はある現象に出会うと、一定の感情が生じます。
しかし同じ現象に出会ってもそれによって生まれる感情は万人共通ではない。
たとえば、叱られたときに生ずる感情は、怒りであったり、
悲しみであったり、感謝であったりする。
同じ人でもその立場や状況、また精神状態によっても違ってきます。
 
なぜこれほどの違いを生ずるのか。
それは起こった現象に対する「捉え方」にその原因があります。
 
「叱られた」という現象に対して、「俺だって一生懸命やっている」と
捉えれば「腹が立つ」。
「また叱られちゃった。嫌われちゃうかなぁ」と捉えれば「悲しい」。
「この人は私を育てようとして、
勇気を持って叱ってくれている」と捉えれば「ありがたい!」。
 
そしてどの捉え方が自分を、そして周りを“幸せ”にできるか? 
これは火を見るより明らかです。
 
以前、どこかの国のトップが
「最小不幸社会の実現をめざす」などという言葉を使いましたが、
全くナンセンスです。

今に幸せを感じることができなかったら、
いつまで経っても幸せになることなどできない。
 
「過去と他人は変えられない。変えることができるのは未来と自分」
 
これからはこの言葉と共に、
 
「過去の捉え方を変えることで、人はより一層幸せになることができる」
 
という一言を加えようと思います。
 
 


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2012年06月26日(火)更新

意思決定する、ということ


千年続く 会社をめざそう㊲
■意思決定する、ということ■

 



経営者の役割が「組織が必要とする役割によって変化する」ことは、
前回お伝えしました。
 
しかし変わらぬ役割もあります。
というよりも、いろんなものを削ぎ落とし、削ぎ落として、
最後に残る唯一無二の役割は「意思決定」することにあります。
これ以外にはないと言っても過言ではありません。
 
ところがときとして、経営者の口から
「決められない」という言葉をお聞きします。
 
その心情は、一人の人間としてとてもよくわかるのですが、
こと経営者となれば、それは役割放棄であり、経営者失格と言わざるを得ません。
 
なぜ「決められない」のか、
「決められない経営者」の口から出てくるその理由は様々です。
しかし真の理由は、そこにはないような気がします。
 
決められないのではなく、決めようとしていない。
いや、もっと積極的に、決めないという意思決定をしている、
そう思えてなりません。
 
今、濁流の中に我が子が流されているとする。
そんな状況の中で「決められない」ことなどあるでしょうか。
何も考えず、上着を脱ぐことさえ気づく間もなく飛び込み、助けようとする。
 
少々極端な例えかもしれませんが、
厳しい経営環境の中での意思決定とは、
本来そのようなものではないかと思うのです。
 
確かに「決める」ことは一定の辛さを伴います。
自分の決めたことです、もし失敗するようなことがあれば責任を取らなければなりません。
また実行にあたっても自ら率先して動かなければなりません。
人が決めたことであればその人のせいにすることもできるでしょうが、
自分の決めたことは誰も責められない。
 
でも、その責を負うことそのものが経営者の役割だと思います。
だからこそ、成功の暁にはそれに倍する喜びも得られる。
 
とにかく決めること、実践することが大切。
間違ったら正せばよい。
その失敗から得られることもまた多いもの。人は失敗からしか学べません。
 
経営者として一番問題なのは意思決定しないこと。
 
「決められない」のではなく、
積極的に「決めようとしていない」ことに気づかなければ前には進めない。
決められない経営者の方には、
まずこの認識が必要だと思います。
 



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2012年06月15日(金)更新

長年の功労者を遇する、ということ


千年続く 会社をめざそう㊱
■長年の功労者を遇する、ということ■



 
経営者の役割は、組織が必要とする役割によって変化します。
企業そのものが変化しているのですから、当然と言えば当然です。
 
たとえば、創業期においては教祖的なリーダーシップが求められるでしょうし、
ある程度成長し、管理者が育ってくればそのまとめ役、
さらに経営幹部が育ってくれば、一歩下がって全体を俯瞰する姿勢も
大切になってきます。
 
一方、求められる人材も企業の発展過程によって変化するのは当然です。
先の経営者の役割に照らせば、創業期においては、
よくも悪くもイエスマン的でないと成り立たないでしょう。
その後は与えられた組織のまとめ役、最終的には経営者の分身として
戦略立案まで担えれば最高です。
 
創業社長でよくみられるのは、
創業当初から頑張ってきてくれた人をそのままNO2にしているケース。
その人が戦略立案まで担える人材であればよいのですが、
少なくないのは悪い意味でのイエスマン。
 
そして求めるものと現実とのギャップを感じ、
口では文句を言いながらもその状態を放置されている。
このようなケースでは社員の不満もたまるばかり。
決してよい状態とはいえません。
 
では、創業以来の功労者であるその人を冷遇すればどうなるか?
昨今では、経営の厳しさを理由に、
それまでの功労者に冷たくあたる傾向もあるようですが、
それでは、若い社員が不安を抱くことになります。
 
繰り返しますが、時代が変われば必要な人材像も変化します。
過去の功労者が今必要な役割を担えるかどうかはわかりません。
しかし、過去の功労者を冷遇することが
組織風土に悪しき影響を与えることは避けられない。
ではどうすればよいのか?
 
好ましい組織風土を実現されている老舗企業を眺めてみた時、
一つの傾向があることに気づきます。
 
それは、報酬と役割の分離です。
ここでいう報酬とは単に経済的報酬を指すものではありません。
精神的報酬をも含みます。
彼がどんなに貢献してきたか、どんな点を見習うべきかなど、
社員からの尊敬を集めるような取り組みが必要です。
 
一方で、現在およびこれからの役割は別で考えなければならない。
その人が持っている長所や能力をじっくり眺め、
それにあった役割を与える。そういう姿勢が大切なのです。
 
過去をどう報い、今後どのような役割を担ってもらうか。
大変難しいテーマであろうかと思いますが、
その対応、その姿勢が社員の安心感と帰属意識を生むのだと思います。



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