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2012年03月13日(火)更新

クレームに応える、ということ

千年続く 会社をめざそう㉚
■クレームに応える、ということ■
 

あるお客様を初めてお訪ねしたときのこと。
2年前からお取引させていただいているものの、
遠方であることもあり、私自身はなかなかお邪魔できずにおりました。
 
アポイントを入れさせていただいた時には、
「うちのような小さなところに来ていただく必要はありませんよ」と
おっしゃっていたのですが、初対面の挨拶もそこそこに、
いろいろなお話しをしてくださいました。
それは通常「クレーム」と言われる内容でした。
 
話され方は非常に穏やかで、言葉も柔らかいものでしたが、
その内容はかなり厳しいものでした。
次々に出てくるその内容に、
「そこまで思ってらっしゃったのか」と、
とても申し訳なく耳を傾けていました。
 
その途中、少しほろ苦い経験を思い起こしていました。
 
私がまだ入社間もない鼻っ柱の強さだけが取り柄だった頃、
あるお客様からお叱りを頂戴したのですが、
その口ぶり、容赦ない言葉に「逆ギレ」し、
大喧嘩して帰ってきてしまったことがありました。
 
結果としては、その後上司が訪問し、
平身低頭お詫びをしてもらって事なきを得たのですが、
当然にして大目玉を喰らいました。
 
その時、その上司から教えていただいたのが、クレームへの対し方でした。
 
・クレームが発生したら、何をおいてでも飛んで行け。それで7割は解決する。
・ 相手の話は、どれだけ理不尽だと感じたとしても遮るな。とにかく聴いて、聴いて、聴き倒せ。
・否定はするな。先方がそう感じていることは事実であり、変えることはできない。  
・話が終わっても、「他にありませんか?」とさらに突っ込め。「もうこれ以上出すものはない」とスッキリされたら、その時点で9割は解決している。
・その上で改善策を示す。できないことはできないと言えばよい。大切なのはその姿勢そのものなのだから。
 
以来クレーム発生時には、どれだけ腹が立っても、悔しくても、
この教えを実践しました。
結果は……上司の正しさを実証するばかりでした。
 
大チョンボで、大クレームを起こしたある卸売業のお客様にいたっては、
訴えられても仕方がないと腹を括ってハンドルを握って車を飛ばし、
通常30分はかかるところを電話が入ってから15分で飛んで行ったことを
「営業の鑑だ」と逆に褒められ、
それまで以上のご依頼をいただくまでになりました。決して褒められることではありませんが(苦笑)。
 
一方で、役職が上がっていくたびに、
直接クレームを言われることが少なくなったように感じます。
 
これは決して「要求要望」がなくなっているのではなく、言いにくくなっているのだろうと思います。
 
お話をお聴きしながら、ほかのお客様に対して申し訳ない気持ちが湧いてきました。
 
そして、口にすることそのものが決して気分がよいわけがないのに、
こうしてお伝えいただけるお客様に、
本当にありがたいと、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
 
1時間ほど正直なお気持ちをお聴きした後、
「いろいろ言ったけど、これからもよろしくお願いします」と
笑顔で締め括っていただくことができました。
またもや、かつての上司の言葉の正しさが実証された一幕でした。




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2012年02月22日(水)更新

10年後を考える、ということ

千年続く 会社をめざそう㉙
■10年後を考える、ということ■


 
3月を目前にして、今、私は10年という年月の重みを感じています。
 
10年前の3月、私は36歳で役員にしていただきました。
この間、役員としていかほどの役割を担えたかは、
私自身が判断すべきことではないとは思いますが、
少なくとも役員として過ごしたこの10年の歳月は、
私自身を成長させてくれたことに間違いありません。
 
また、その人事のあった日は、私にとって
家業を継ぐという道を完全に断ち切った時でもありました。

その申し訳なさ、せめてもの罪滅ぼしとの気持ちが、
事業承継を生涯の仕事にしようと決めた要因の一つであることもまた、間違いありません。
 
さてその10年前、私は個人的な明確な目標を持つことをやめました。
 
出典は失念しましたが、以前、書物で目にした分類で、
人間の生き方には「目標達成型」と「天命追求型」があるとのこと。
自分で定めた目標を追求していくタイプと、今の今自分の置かれた環境で
ベストを尽くすタイプ、という違いなのだそうです。
 
後者の代表選手は豊臣秀吉なのだとか。
確かに彼が信長に仕え始めた時点で天下取りなどは夢にも思わなかったのでしょう。
しかし彼は確かに手に入れた。
信長の信を得るという天命を追求した結果だ、
と言われれば確かにそうだというほかありません。
 
私は役員を拝命するとき、そこまで大袈裟に考えていたわけではないのですが、
概ね「天命追求型」的な生き方をしようと決めた、
そんな気持であったように思います。

少なくとも「一部門長の立場から離れ、全社員の公僕たろう」と
思いを定めていました。それが役員たるものだと思っていたからです。
 
以来、総務・人事、支店開設、ファイナンシャルプランナー、M&Aなど、
請われるままにいろいろな部署を体験させていただきました。
どちらかといえば「目標達成型」であった私としては、
180度異なる生き方を自ら選択しました。

そしてその選択は今、とても正しかったと確信しています。
 
そんな私ですが、後継者には「目標達成型であれ」と説きます。
「どんなに周りが否定しようとも、10年後のあるべき姿を示せるのが経営者だ」と……。
 
それはなぜか。
 
私は経営者たるもの、「目標達成型」と「天命追求型」の両方を
兼ね備えていなければならない、と思っています。

そして若い頃、とことん「目標達成型」をやった経営者ほど、
それと等しく「天命追求型」を極めることができる、そう思うのです。
 
豊臣秀吉も、徹底して「目標達成型」を貫いてきたからこそ、
天命を預けることができる人に出会えた、と私には思えてなりません。
 
いずれにしろ、若い頃は徹底して「目標達成型」であることが
肝要であると思います。

そして最低10年は一つの目標に向けて、ひたむきにひた走る、
そういう経験が必要なのだと思います。
 
そして、そういう経営者は、
縁あって出会った社員の10年後を慮って言動することもできるように思います。
 
吉田松陰の言葉に、
 
「小過を以て人を棄てては大才は決して得べからず」
 
というものがありますが、10年後の成長した姿を夢見て、
目先の小さな過ちを笑って許せる、
そういう懐の深さを感じる経営者になれる、と感じるのです。
 
「十年一昔」とはよくいったもので、10年単位で物事を考えることは、
とても大切なことだと思います。




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2012年02月09日(木)更新

取るべき道は自ずと見えてくる、ということ

千年続く 会社をめざそう㉘
■取るべき道は自ずと見えてくる、ということ■



 
「○○しようと思うのですが、どうでしょうか?」
 
という質問をよく受けます。
これに対して私は、
 
「やりたいのであればやってみてはどうですか?」 
 
と返答します。
事実、物事はやってみないとわからないからで、
そこは理屈ではありません。

やりたいと思うのならやる、それほどでもなければやらない、
それしかありません。
 
そもそも、100%大丈夫であることが保証されているものなど
この世にはありませんし、
仮にそのようなものが在るとすれば、必ずや既に誰かがやっていて、
手を出したとしても時すでに遅し。
相手の背中は遥か遠く彼方に見えることでしょう。
 
逆に経営者は、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」では困ります。
成功の見込みが立たないものを投機的に行うのは経営者ではない。
ギャンブラーであってはなりません。
 
「老年のパイロットや危険知らずのパイロットはいるが、
危険知らずで長生きしたパイロットはいない。」
 
とは投資専門家として著名なチャールズ・D・エリス氏の言葉ですが、
経営でも同じ。

「太く短く」的な発想で、社員さんや家族を
路頭に迷わすようなことをしてはなりません。
 
感覚的なものですが、6~7割の見込みがあればやってみる、
そういう目安を持つことも大切だと思います。
 
しかしそれよりも大切なのは、
「とことんやり切る覚悟はあるか」ということ。
「やってみて、うまくいったらラッキー」的な心構えでは
とても成功を勝ち取ることなどできません。
大事なのは「何があってもやり切る!」という姿勢だと思います。
 
そして、その覚悟で臨んだとき、
そのことそのものは手に入れることができなかったとしても、
それを通じて新たな、本来取るべき道が見えてくる、
そういうものだと思います。
 
「○○しようと思うのですが、どうでしょうか?」
 
この問いが、単に自分の覚悟を後押しして欲しい、
他者から太鼓判を押されることで、さらなる勇気を持ちたい、
そういうものであればよいのですが、
「ダメと言われたら止めよう」程度のものであれば、
はなからやらない方がよい。
 
もっと言えば、多くの人がダメ出しするものの方が、
実現できた時の効果は絶大!
 
「否定されたら大喜びでGO!」

くらいの気持ちが大切です。
 
いずれにしろ、確かに言えるのは、
「とことんやってみれば自ずと取るべき道がみえてくる」
ということです。



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2012年01月26日(木)更新

バカになる、ということ

千年続く 会社をめざそう㉗
■バカになる、ということ■


 
「優秀な経営者とは、どのような人ですか?」
 
後継者から受ける質問の中でも、かなりのウェイトを占めるものです。
私は即座に反します。「成果を上げることができる人です」と。
 
すると必ず返ってくる質問は
「経営者が挙げるべき成果とはなんですか?」というもの。
 
これに対しても即座に、「お金を残せる人です」と答えます。
 
「お金を残す」何だか守銭奴のようですね。
もちろん、お金を増やすことが目的ということではありません。
あくまでもバロメーターです。
 
私は「売上高はご奉仕高、キャッシュは誠実のバロメーター」だと思っています。
誠実な商いをして、お金が残らないなんてあり得ない。
もし誠心誠意を尽くしてお金が残せないとすれば、
その心や気持ちを表す方法・手段がおかしい。
まさに「誠の実」が伴っていないのだと思うのです。
 
特に後継者の方には、次のような考えを
きちんと持っていただきたいと思います。
 
それは、親・先祖からいくら預かって、そのうちいかほど使わせていただいて、
それを活かすことで自分の代でどれだけ産み出して、
結果として、先代から預かったものにどれだけプラスして次代に渡すことができたか。
それこそが自代の成果であり、そのバロメーターである、ということです。
 
さらに質問は続きます。
「ではどうやったら成果を出せる経営者になれるのですか?」
 
残念ながらこれには正解はありません。
ただ、成果を上げていらっしゃる経営者を眺めてみると、
いくつかの共通点があることに気づきます。
特に若き後継者に学んでいただきたいのは、「バカになれ」ということ。
 
第一に、商いに対して、バカがつくほどド真剣になれ、ということ。
これは説明はいりませんね。
 
第二に、人に対してバカになれ、ということ。
誠心誠意商いすればするほど、当然に人と衝突することになります。
先代、社員さん、取引先さん・・・、立場が違った者同士が真剣になれば、衝突は避けられない。
 
しかしいくら理屈で切り返しても残るのはシコリだけ。
その時に「バカになる」。いったん受け入れる、ということですね。
捨てる神あれば拾う神あり、
その誠実さが、新たなものを産みだすものだと思います。
 
人がついてくるトップは、どこか可愛らしいところがある、
と感じるのは私だけでしょうか?
 
バカの効用、是非考えていただきたいと思います。
  



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2012年01月11日(水)更新

前を向いて撤退する、ということ

千年続く会社をめざそう㉖
■前を向いて撤退する、ということ■



新年、明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 
さて新年早々のテーマが「撤退」とは、
あまり相応しくないようにも思いますが、
今年は、多くの企業経営者にとり、大変大切な視点であると思いますので、
あえて選ばせていただきました。
 
今年の干支は「辰」。

聞くところによると、辰年は今まで内に蔵されていた、
あるいは紆余曲折した陽気な活動が外に出て活発に動く年なのだとか。
これまで蓄積してきたものを芽吹かせる年である、そう考えることができそうですね。
 
ただし、新たな取り組みをするとき大切なのは、
「何をするか」よりも先に「何を捨てるか」にあります。
特にないもの尽くしの中小企業ではとても大切な視点です。
何かを捨てないと、新たなものに取り組むだけのパワーが確保できないからです。
 
また新規事業は「100%大丈夫」などということはありませんし、
仮にそのような状態であれば既に手遅れ。他社が悠々と先を走っていることでしょう。
しかし、6割を下回るような確率では賭博に近い。
できれば7割の勝算を持って打って出たいところ。
それでも3割は撤退の可能性がある。

さらには撤退に要するパワーは進出の際のそれとの比ではありません。
新たな事業分野に進出するときには、
常に撤退まで考えておかなければならないのです。
 
この「撤退」というテーマを考える時、
大切なことが3つあります。
 
第一に、新規事業進出前に「撤退の目安」をきちんと設けておくこと。
「○年以内に○○までにできなければ撤退」という明確なゴールラインを設定しておくこと。
それは決して高い目標でなくても構いません。
“千年経営”を目指すなら、十年単位の設定でも構わない。
大切なのは、甘えと妥協とマンネリを排除する姿勢そのものです。
 
第二に、その目安を超えたら、いかなる理由があっても撤退すること。
「もうちょっと頑張れば」「あと少し投資すれば」は禁物。
一度の妥協は、次々と連鎖を起こしていきます。鬼となって実行する必要がある。
ただし、撤退の仕方には留意が必要でしょう。

「立つ鳥跡を濁さず」のことわざの通り、
利害関係者それぞれが“納得感”のある方法を検討する必要があります。
いろいろな会社を見させていただきましたが、
「去り際の美しさ」が企業のモラルを映し出すとともに、
のちの信用を左右するものだと感じます。
 
第三に、撤退するなら、それに倍する魅力ある新たな取り組みに邁進すること。
単なる撤退は、不安と不満と疲弊しか残しません。
特にその事業に関与した者は、多かれ少なかれそういう感情を持つのが当たり前。
ある意味、リハビリ期間はどうしても必要です。
しかし、いつまでもそんなところで留まってもらっていては困ります。
その底なし沼から這い上がっていくためには、魅力ある別天地が必要なのです。
 
要するに「進出」と「撤退」は、実は常に同時並行で考えられるべきことなのです。
 
新しい年が始まり、新たな取り組みを検討されているところだと思います。
そのときにはぜひ「撤退」についても考えていただきたい。
それは決してネガティブな姿勢などではなく、
新たな取り組みの成功確率を高めるためにも必要なことだと思います。




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