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2012年01月26日(木)更新

バカになる、ということ

千年続く 会社をめざそう㉗
■バカになる、ということ■


 
「優秀な経営者とは、どのような人ですか?」
 
後継者から受ける質問の中でも、かなりのウェイトを占めるものです。
私は即座に反します。「成果を上げることができる人です」と。
 
すると必ず返ってくる質問は
「経営者が挙げるべき成果とはなんですか?」というもの。
 
これに対しても即座に、「お金を残せる人です」と答えます。
 
「お金を残す」何だか守銭奴のようですね。
もちろん、お金を増やすことが目的ということではありません。
あくまでもバロメーターです。
 
私は「売上高はご奉仕高、キャッシュは誠実のバロメーター」だと思っています。
誠実な商いをして、お金が残らないなんてあり得ない。
もし誠心誠意を尽くしてお金が残せないとすれば、
その心や気持ちを表す方法・手段がおかしい。
まさに「誠の実」が伴っていないのだと思うのです。
 
特に後継者の方には、次のような考えを
きちんと持っていただきたいと思います。
 
それは、親・先祖からいくら預かって、そのうちいかほど使わせていただいて、
それを活かすことで自分の代でどれだけ産み出して、
結果として、先代から預かったものにどれだけプラスして次代に渡すことができたか。
それこそが自代の成果であり、そのバロメーターである、ということです。
 
さらに質問は続きます。
「ではどうやったら成果を出せる経営者になれるのですか?」
 
残念ながらこれには正解はありません。
ただ、成果を上げていらっしゃる経営者を眺めてみると、
いくつかの共通点があることに気づきます。
特に若き後継者に学んでいただきたいのは、「バカになれ」ということ。
 
第一に、商いに対して、バカがつくほどド真剣になれ、ということ。
これは説明はいりませんね。
 
第二に、人に対してバカになれ、ということ。
誠心誠意商いすればするほど、当然に人と衝突することになります。
先代、社員さん、取引先さん・・・、立場が違った者同士が真剣になれば、衝突は避けられない。
 
しかしいくら理屈で切り返しても残るのはシコリだけ。
その時に「バカになる」。いったん受け入れる、ということですね。
捨てる神あれば拾う神あり、
その誠実さが、新たなものを産みだすものだと思います。
 
人がついてくるトップは、どこか可愛らしいところがある、
と感じるのは私だけでしょうか?
 
バカの効用、是非考えていただきたいと思います。
  



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2012年01月11日(水)更新

前を向いて撤退する、ということ

千年続く会社をめざそう㉖
■前を向いて撤退する、ということ■



新年、明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 
さて新年早々のテーマが「撤退」とは、
あまり相応しくないようにも思いますが、
今年は、多くの企業経営者にとり、大変大切な視点であると思いますので、
あえて選ばせていただきました。
 
今年の干支は「辰」。

聞くところによると、辰年は今まで内に蔵されていた、
あるいは紆余曲折した陽気な活動が外に出て活発に動く年なのだとか。
これまで蓄積してきたものを芽吹かせる年である、そう考えることができそうですね。
 
ただし、新たな取り組みをするとき大切なのは、
「何をするか」よりも先に「何を捨てるか」にあります。
特にないもの尽くしの中小企業ではとても大切な視点です。
何かを捨てないと、新たなものに取り組むだけのパワーが確保できないからです。
 
また新規事業は「100%大丈夫」などということはありませんし、
仮にそのような状態であれば既に手遅れ。他社が悠々と先を走っていることでしょう。
しかし、6割を下回るような確率では賭博に近い。
できれば7割の勝算を持って打って出たいところ。
それでも3割は撤退の可能性がある。

さらには撤退に要するパワーは進出の際のそれとの比ではありません。
新たな事業分野に進出するときには、
常に撤退まで考えておかなければならないのです。
 
この「撤退」というテーマを考える時、
大切なことが3つあります。
 
第一に、新規事業進出前に「撤退の目安」をきちんと設けておくこと。
「○年以内に○○までにできなければ撤退」という明確なゴールラインを設定しておくこと。
それは決して高い目標でなくても構いません。
“千年経営”を目指すなら、十年単位の設定でも構わない。
大切なのは、甘えと妥協とマンネリを排除する姿勢そのものです。
 
第二に、その目安を超えたら、いかなる理由があっても撤退すること。
「もうちょっと頑張れば」「あと少し投資すれば」は禁物。
一度の妥協は、次々と連鎖を起こしていきます。鬼となって実行する必要がある。
ただし、撤退の仕方には留意が必要でしょう。

「立つ鳥跡を濁さず」のことわざの通り、
利害関係者それぞれが“納得感”のある方法を検討する必要があります。
いろいろな会社を見させていただきましたが、
「去り際の美しさ」が企業のモラルを映し出すとともに、
のちの信用を左右するものだと感じます。
 
第三に、撤退するなら、それに倍する魅力ある新たな取り組みに邁進すること。
単なる撤退は、不安と不満と疲弊しか残しません。
特にその事業に関与した者は、多かれ少なかれそういう感情を持つのが当たり前。
ある意味、リハビリ期間はどうしても必要です。
しかし、いつまでもそんなところで留まってもらっていては困ります。
その底なし沼から這い上がっていくためには、魅力ある別天地が必要なのです。
 
要するに「進出」と「撤退」は、実は常に同時並行で考えられるべきことなのです。
 
新しい年が始まり、新たな取り組みを検討されているところだと思います。
そのときにはぜひ「撤退」についても考えていただきたい。
それは決してネガティブな姿勢などではなく、
新たな取り組みの成功確率を高めるためにも必要なことだと思います。




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